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2017.8.9

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【日本の祭と伝統行事】
第二回 狸谷(たぬきだに)山不動院 火渡り祭
夜空を焦がす祈りの炎 修験道の神秘にふれる
狸谷(たぬきだに)山不動院~京都市~

 
オフアワーズ編集部 

狸谷(たぬきだに)山不動院のカンタンな説明

山伏の読経とどろく、迫力の修験道

祈りが夜空を焦がす! 時を忘れて炎に魅入る

祈りを胸に、いざ火渡り

ふけゆく修験の山、全身に満ちる気を感じて下界へ

京都狸谷山不動院火渡り祭

狸谷(たぬきだに)山不動院のカンタンな説明

真言宗狸谷山修験道の流れをくむこちらのお寺は、京都市左京区にあります。京都をよくご存じの方でも、ピンとこないかもしれません。いわゆる観光寺院ではなく、京都のまちを取り囲む山々の間、小さな谷にひっそりと佇むお寺なのです。最寄駅を降りたら30分から40分かけて、住宅街から急勾配の坂をのぼります。開山は西暦1718 年、木食正禅朋厚(後の養阿上人)が狸谷不動明王を現在の石洞窟に安置したことに始まります。それより以前、戦国時代を生きていた宮本武蔵が修行したといわれている滝が境内にあることからも、狸谷一帯がそれまでも神秘的な場所であったことはいうまでもありません。

京都狸谷山不動院
叡山電車から狸谷山不動院到着まで

出町柳駅で叡山電車に乗車します。叡山電車は行き先が2方向に分かれていますが、目的地の一乗寺駅へはどちらの方向に乗っても着くことができます。ゆっくり、コトコト、閑静な市街地を走ること3駅、一乗寺駅にて下車します。無人のホームを出て、踏み切りを渡ったら、そのまま東へ向かって一直線です。途中、宮本武蔵で有名な一乗寺下り松、八大神社、庭園で名高い詩仙堂を通過します。

山伏の読経とどろく、迫力の修験道

叡山電車から狸谷山不動院到着まで

本当にこれから山の一大行事が繰り広げられるのだろうか。あまりの人けのなさに不安を感じます。車でも途中までのぼっていけるそうですが、だいぶ前に2、3台、追い越していったきりです。道が左右にカーブするごとに山は深くなり、枝葉が頭上を覆うようになってくると否応なしに厳粛な気持ちが高まります。

叡山電車から狸谷山不動院到着まで

さらに、交通安全自動車祈祷殿でもある駐車場を通り過ぎると、空気が明らかに変わります。肌にまとわりつくのは、1時間前に降った通り雨の湿気。全身にベタベタとした不快感があるものの、空気はひんやりとしているのがわかります。むせ返るような土や木の湿ったにおいに混じって、聖域の張りつめた空気が濃くなっていくのを、一歩ごとに感じるようになります。ようやく寺号を刻んだ石碑と火渡り祭の看板が見え、ひと安心。規則正しく並んだ灯ろうが、行き先を照らして歓迎してくれているようです。そそり立つ石段の上に他の参拝者の姿も見えます。

狸谷山不動院本堂前

本堂前に到着しました。驚いたことに、すでに火渡りの順番を待つ列ができています。まだ18時前でした。これから法要や護摩供養があるはずですが…。「タヌキダニのお不動さん」と親しまれているこちらのお寺は、交通安全、厄除け、がん封じに御利益があるといわれていますが、厚い信仰心には頭が下がります。まずは本堂へ。切り立った崖を背に本堂がそそり立っているのがわかります。なるほど、奥に向かって谷になっています。

 

本堂横の授与所前で、氷で冷やしたおしぼりとお茶の接待がありました。おしぼりはキンキンに冷えていて、汗と湿気でベトついた肌に爽快です。首のうしろや胸元をぐいぐい拭いました。こんな時、思うのです。「男に生まれたかった~!」喫茶店のおっちゃんのように顔面をごしごし拭きたい!授与所に入るとやっぱり冷房が効いています。お札など見ながら束の間、涼みます。護摩木が二種類売られています。500円のほうは今晩の護摩壇に入れてもらえるとのこと。せっかくですし、護摩木を入手、願い事と名前、数え年を筆書きして奉納しました。

狸谷山不動院舞台上本堂前

その時、本堂から読経の声が聞こえてきました。法要が始まったようです。それにしても、ものすごい迫力です。急いで入山料を払って本堂へ急ぎます。山伏姿の僧侶たちがご本尊の不動明王に向かって一心不乱にお経をあげています。最前列では護摩壇の炎が勢いよくあがっています。お腹の底にずっしりと響く声、体の内側から邪悪なものが祓われるようなものすごいパワーを感じます。胸の奥が騒いで、何かの拍子に喉の奥から何かが飛び出してくるような感覚まで襲ってきます。手を併せて、しばし祈ります。

祈りが夜空を焦がす! 時を忘れて炎に魅入る

狸谷山不動院本堂前夕景

法要が終わって本堂を出ると、狸谷はうっすらと藍色を濃くしていました。崖にはりつくように建った本堂からは、夕焼けに暮れていく京都市内が見えましたが、どことなく遠い異世界を眺めるような感じがしました。

狸谷山不動院火渡り道場全景

武蔵の滝のあたり、小さな祠の横にいい場所を見つけました。蜘蛛が巣をはっていて、薄暗いこともあって嫌厭されてきたのかもしれません。目の前の大きなのぼりも邪魔です。しかし、祠にもたれかかるようにすると、なんとかのぼりを避けて護摩壇を写真におさめることができます。足元には山伏席。山伏の背中越しに護摩壇を拝めるいい場所です。

 

中央の道場に山伏が入場してきました。20人ぐらいでしょうか。護摩壇を臨める場所に座り、読経がはじまりました。ほら貝の音、続いて弓矢を射るような仕草、木を切り倒すような仕草で、道場が清められていきます。

狸谷山不動院火渡り祭儀式

いよいよ、松明が運びこまれるタイミングになると、あたりはすっかり闇に包まれていました。カメラのシャッタースピードが遅くなっていました。三脚がないのは致命的です。カメラはここまでかとあきらめながらも、炎の勢いが増してくる護摩壇へカメラをむけてみると、シャッタースピードがあがっています。周囲を見渡すと、観覧客が食い入るように儀式を見守っている顔がよく見えます。護摩壇まではかなり距離がありましたが、頬に炎の熱を感じることができます。それほど火の勢いが強いのです。護摩壇の大きさは、かなり大きめのキャンプファイヤーぐらいでしょうか。人々の熱気と読経がその迫力と勢いを増しているように感じます。

狸谷山不動院火渡り祭夜空を焦がす勢い

炎はどんどん勢いを増します。夜空を焦がすようにとはまさにこのことです。人々の祈りが炎にのって天まで届くようです。思わず手をあわせ、夜空を仰ぎます。

祈りを胸に、いざ火渡り

狸谷山不動院火渡り祭火床の準備

一連の儀式が終わると、護摩壇はみるみるうちに崩されていきます。まだ火のついた灰を平らに敷きつめて、人が通り抜けるための幅1メートルほどのスペースをつくっていきます。炎があがっているところは、整地用のトンボのようなもので上からどんどん叩いています。周囲はまだ炎が残してあります。炎ごしに人が渡っていく姿を見ると、火の上を歩いているように見えるのでしょう。火を渡っているようにみえるのです。火渡りの順番待ちの行列は本堂裏まで続いていましたが、長くは待ちませんでした。すぐに道場までたどり着くことができました。

狸谷山不動院火渡り祭火渡りお札

靴を脱いで裸足になり、火床の直前で500円を支払って火渡りお札をもらいます。これを持って渡れといわれたわけではありませんが、念のため、やけどをしないようにとお札を両手で握りしめました。

狸谷山不動院火渡り祭火を渡る人々

いざ自分の順番がくると、山伏が背中に何やら気を注入してくれます。「まっすぐ、真ん中を歩くんやでえ」と横に立っていた山伏に緊張を煽られながらも火渡り開始です。

狸谷山不動院火渡り祭火を渡る山伏

おそらくずっと昔には、本当に火のついた灰の上を歩く修行があったのでしょう。気を入れて、自分を信じて前進する。大事なことは足裏の熱ではない。まっすぐ、強い心で進むこと。そう自分にいい聞かせて歩くのがこの修行の意義なのかもしれません。後半にさしかかると煙で目を開けていられません。それでも前方を見据えて進むのです。

 

渡り終えると、再び山伏から気を入れてもらいます。道場を出ると、左手に足洗い場があります。といっても、石畳の上にホースが投げてあるだけですが。本来は灰をつけたまま帰るのだそうです。確かにご利益が長持ちしそうです。

ふけゆく修験の山、全身に満ちる気を感じて下界へ

夢を見ているような不思議な体験でした。闇を焦がす炎、体が浄化されていくような読経、研ぎ澄まされた空気、闇に沈んだ谷あいで、年々くりかえされてきた祈りの祭に、浮世人の尽きない悩みの数々を思いました。

 

京都の祭、行事といえば、祇園祭や葵祭のようにおしとやかなものが多いですが、狸谷山不動院の火渡り祭はおもむきが異なります。その迫力と神秘に身が引きしまるような緊張感があるのです。夜ということもあり、その世界観をどっぷりと味わうことができ、日常を忘れるという意味でも非常におすすめの祭です。ご都合があえば、年に一回の特別な夜をぜひ堪能していただきたいと思います。

参考資料

  • 狸谷山不動院ホームページ
    http://www.tanukidani.com/
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名称 狸谷山不動院
住所 〒606-8156
京都市左京区一乗寺松原町6
電話番号 075-722-0025
webサイト http://www.tanukidani.com
メールアドレス fudoin@tanukidani.com
開門時間 午前9時~午後4時
※祭典行事により異なります。
※火渡り祭は午後6時30分の法要以降午後9時30分ごろまで
閉山日 なし
料金 入山料500円

 

オフアワーズ編集部

 

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